ネットやSNSでよく目にする「中国人留学生は一人350万円もらっている」という話題。
これを読んだ人の多くが「日本人は借金をして大学に通うのに、なぜ外国人にそんなに大きな補助が出るのか」と疑問や不満を抱きます。確かにインパクトのある数字ですが、実際の制度を詳しく見ると「事実の一部」と「誤解」が混ざって広まっているのが実情です。
この記事では、補助金の仕組みと対象者、そして日本人学生との比較を通じて、問題の本質を整理していきます。
「中国人留学生350万円」という数字の正体
国費外国人留学生制度とは
この金額の根拠となっているのは文部科学省の国費外国人留学生制度です。これは日本政府が優秀な留学生を招くための奨学金で、以下のような支援が含まれます。
- 授業料・入学金の免除(年間50〜70万円相当)
- 生活費の給付(学部生で月11万7千円、大学院生で月14万4千円前後)
- 渡航費の支給(片道分)
なぜ350万円になるのか
大学院生が2年間在籍すれば、生活費だけで約346万円。ここに授業料免除や渡航費を加えると、実質的に350万円以上の公的支援を受けられる計算になります。
実は対象はごく一部の留学生
国費留学生の割合
重要なのは、この制度を利用できるのはごく一部だという点です。
- 2023年の国費留学生は約9,000人
- うち中国人は676人程度
- 一方で、日本にいる中国人留学生は約11万5千人
つまり、実際に「350万円相当の支援」を受けているのは、中国人留学生全体のわずか0.6%に過ぎません。
大多数は自費で留学
多くの中国人留学生は自費やアルバイト収入で生活しており、「全員が350万円をもらっている」というのは誤解です。
ただし、日本人が中国の大学、特に北京大学や清華大学などに留学した場合、日本の国費留学生制度のような手厚い給付は基本的に存在しませんし、アルバイトも原則禁止です。
生活費はすべて自費か、日本からの日本学生支援機構(JASSO)の奨学金を頼るケースが一般的です。
日本人学生は「借金」で大学へ
日本人奨学金の仕組み
一方、日本人の大学生の多くは日本学生支援機構(JASSO)の貸与型奨学金を利用しています。
- 平均借入額は約300万〜400万円
- 卒業後は20年近く返済が続くケースも多い
給付型奨学金や授業料減免制度もありますが、対象は限られており、多くの学生は「借金」を背負って社会に出ています。
不公平感の背景
このため「外国人は給付、日本人は借金」という構図が不公平に映り、「日本人差別ではないか」という声につながっています。
なぜ外国人留学生を支援するのか
大学を維持するため
少子化で日本人学生が減る中、多くの大学は留学生を確保しないと経営が成り立ちません。
優秀な人材を確保するため
日本政府は「優秀な留学生を日本に定着させ、将来の高度人材として活躍してほしい」と考えています。
国際関係の一環
アジア諸国との関係強化や国際的な交流促進も、制度の背景にあります。
誤解されやすいポイント
誤解: すべての中国人留学生が350万円もらっている
実際: 対象は国費留学生のみで、全体の1%未満
誤解: 一律に現金で350万円が支給される
実際: 授業料免除+毎月の生活費+渡航費を合算した金額
誤解: 日本人には支援がない
実際: 日本人にも給付型奨学金や授業料減免はあるが、対象は狭い
今後の課題
本当に問われるべきなのは「外国人への支援」そのものではなく、日本人学生への支援とのバランスです。
- 日本人学生の教育費負担は依然として重い
- 留学生支援が目立つ一方で、日本人への投資は十分とは言えない
- このアンバランスが「外国人優遇」という不満につながっている
まとめ
「中国人留学生に350万円」という話は、事実の一部ではあるものの誤解を含んで広まっています。
確かに一部の国費留学生は手厚い支援を受けていますが、それはごく少数。
ただし、日本人学生が借金を背負って進学している現状との対比は、不公平感を強く生んでいます。
この問題を考えることは、日本人差別が日本国政府によって行われているということの証明になるのはないでしょうか?
皆さんはどう思いますか?



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